第11回全日本大学女子硬式野球選手権高知大会で大阪体育大学は準優勝となりました。昨年、成績が振るわず創部15年で初めて全日本選手権出場を逃し、巻き返しを誓った大会。大会前にエースが負傷するアクシデントを乗り越えての決勝進出でした。けがから復帰し6試合中5試合で登板したエースの柏﨑咲和(体育学部4年、福井工業大学附属福井)、主将?捕手としてチームをけん引した山本一花(体育4年、大阪?履正社)、打率4割1分2厘、4長打の猛打が光ったけん引した木村睦実(体育学部4年、京都両洋)に大会を振り返ってもらいました。

大阪体育大学のエース柏﨑、主将の山本、5番?木村
◆けがから復帰し大車輪のエース?柏﨑咲和
「抜き方、ギアの入れ方。何かをつかめた大会」

柏﨑咲和(かしざき?さわ)
大会約2週間前の4月末、柏﨑は練習試合で打球を利き腕の左手に受けました。医師の診断は「治すことを優先するのなら、1か月以上固定して絶対安静」。しかし、「昨年日本選手権を逃して悔しい思いをし、春に絶対日本一になると誓って一冬を越した。インカレをあきらめる選択肢は自分の中にはなかった」。医師と相談し、けがの5日後には恐る恐るボールを握って投げる動作をして痛みが出るかどうか確かめました。「行けるんじゃないか」。徐々に出力を上げて大会の1週間前から投球練習を再開しました。
2試合目の予選リーグ、平成国際大学戦で先発。「アドレナリンもあって痛みなく投げられた」といい、5回を1失点。1回戦、準々決勝も先発して無失点で継投して、先発の役目を果たしました。準決勝の尚美学園大学戦では7回を2失点で完投勝利。ダブルヘッダーとなった仙台大学との決勝も救援して六、七回を0点に抑えて反撃を待った。23イニングで3失点。けが直後とは思えない獅子奮迅のマウンドでした。

柏﨑
3歳の時、兄の影響で野球を始めました。福井工業大学附属福井高校では1年生の夏に新人大会で全国優勝しましたが、高校卒業後も野球を続けるかどうか迷った時期もあったといいます。そんな時、大体大の横井光治監督から声を掛けられて体験練習に来ました。高校とは違う自主性に重点を置いた練習だと知らされて魅力を感じ、入学しました。
飛び抜けた球威がある分けではないですが、カーブ、スラーブ、スライダー、チェンジアップ、スプリットをどの球種もバランスよく投げ分けます。「先発として試合を作る力、ピンチでのギアの上げ方が自分の長所だと思う」と話します。
高知大会での収穫は「すべてマックスの力を出すのではなく、抜くところは抜き、ギアを上げるところは上げる調整ができた。何かをつかめた大会だった」といいます。一方で悔いが残ったのは決勝。六、七回を0点に抑えたが、先頭打者を出しました。「3人、3人で切っていたら、サヨナラになっていたかも知れない。エースとしてチームの勝利のためにもっと頑張らないと」
チームのムードメーカーであり、横井監督によると、学内を歩いていてもゴミがあると必ず拾うといいます。
将来の目標は日本代表、侍ジャパンのユニホームを着ること。昨年のW杯ファイナルステージでMVP?首位打者を獲得し日本の7連覇に貢献した1年先輩の白石美優(現阪神タイガースWomen)の背中から、代表で学んだことを共有するなどチームに尽くす姿勢を学びました。
「日本代表の夢に向けて、大学生活の野球を自分の体で表現し、女子野球界を引っ張っていける投手になりたい」と抱負を語りました。
◆4番?捕手?主将の山本一花
「辛い冬越え野球を楽しめた」

山本一花(やまもと?いちか)
主将の山本は準優勝となった高知大会を「この冬は苦しかったが、ミーティングを何回も重ねて全員で頑張ってきた。大会に入って全員の顔を見た時、みんなが声を出して野球を楽しんでいた。その雰囲気はすごく良かった」と振り返ります。
柏﨑がけがをした後、捕手として投手陣を集めて言いました。「どこかにエースの力で何とかしようという部分があったと思うけれど、もう、エースには頼れない。みんなでやっていくしかないんだよ」。この時点では、横井監督も高知大会は柏﨑抜きの起用を考えていたといいます。
投手陣の意識が変わったことが、練習態度から伝わってきたそうです。山本はブルペンで受けた球の1球1球に「すごい思いがこもっていた」と振り返ります。

山本(資料写真)
初戦は4年生の大熊こころ(教育学部4年、埼玉?花咲徳栄)が先発し、小刻みに継投。清井結月(スポーツ科学部、兵庫?蒼開)、谷蒼依(教育、京都外大西)の両1年生がつなぎ、被安打1で完封しました。清井と谷は1回戦、決勝などでも好投。山本は「1年生の2人は緊張もあったと思いますが、野手を信じて迷いのないピッチングをしてくれた」と評価します。
小学1年から野球を始め、履正社高校3年の時、春の全国選抜大会で準優勝しました。保健体育科の教員志望で、教員免許が取れて野球もできる大学として、大体大に進みました。
1年生の秋から正捕手。「試合経験が豊富なチームの要」として、主将に指名されました。
女子野球のインカレは春の高知大会と夏の和歌山大会(8月、田辺市など)があり、夏のインカレでは2021年以来の優勝がかかります。「選手個々の力はあるが、高知大会では持っている力を全員が発揮することができなかった。出したいところで力を出すための質の高い練習をしていきたい」と話します。
幼いころから日本代表になることが夢でした。夢の実現のためにも、負けられない夏になります。
◆打率.412、4長打の木村睦実
「夏に向け投手陣を支える打線を作り上げたい」

木村睦実(きむら?むつみ)
17打数7安打、うち4本が長打。決勝では両翼96mのフェンス直撃の二塁打も放ちました。バットで打線を引っ張った5番一塁の木村は「試合を重ねるごとに力を出せた。しかし、ここというところでの1本がもっと打てたら」と振り返ります。
初戦の仙台大学戦の一回に先制の犠牲フライ。2戦目の平成国際大学戦も一回に先制の中前タイムリー。続く決勝トーナメント1回戦の至学館大学戦も延長八回タイブレークで決勝の2点二塁打。準々決勝の至誠館大学戦も一回に先制の2点三塁打。4試合連続打点でチームに勢いをもたらしました。
決勝のフェンス直撃のほか、準決勝でもセンターオーバーの二塁打を放ち、長打力が魅力です。

木村
小学3年から野球を始め、京都両洋高校では3年夏に全国選手権でベスト4。関西で野球を続けるため、大体大に進みました。
2年夏からレギュラーを務め、昨年も5番を務めます。
打線の要として、一人ひとりに打撃の力はあるが、打線が線になり切れず得点につながらなかったと反省します。
和歌山大会に向けて、「高知大会では投手陣が頑張ったが、打撃は課題として残った。夏は投手陣を支える打線を作り上げたい」と意気込んでいます。

大阪体育大学硬式野球部女子
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